研究概要 |
これまでにRas、Rab、Rho/Rac、Arf、Ranなどといった低分子量G蛋白質ファミリーが同定され、それらは細胞の分化・増殖、小胞輸送、接着・形態形成や核内輸送の制御因子として、多彩な細胞機能に介在することが明らかにされてきた.本研究では、最近我々が独自に同定したアティピカルな新規低分子量G蛋白質群(GTPases indispensable for equal segregation of chromosomes ; Gie)が介在するシグナル伝達系と生理機能の解明を進めた。 1、Gieは既知の低分子量G蛋白質とは相同性が低く,新たなサブファミリーを形成する点でアティピカルであり、ヒトのすべての臓器で発現していた。2、過剰発現によるGieの細胞内でのグアニンヌクレオチド結合様式を検討した結果、GTP型とGDP型の両者が存在したことから、他の低分子量G蛋白質と同様にGTPaseサイクルによるGieの活性制御が示唆された。3、Gieに点変異を導入することでGTP型あるいはGDP型に固定される変異体をそれぞれ作製し、それらの変異体を哺乳細胞に過剰発現させた際の表現型を観察した。その結果、不活性型と考えられるGDP型変異体を導入した細胞において核が断片化するという表現型を見出した。このことは不活性型Gieの過剰発現により、分裂期における染色体の均等分配に異常が出る可能性を示している。4、ショウジョウバエ細胞株のS2細胞を用いてRNAi(RNA interference)法によりGieの発現を抑制した結果、染色体の分離に際して顕著な異常が発現した。5、さらに,Gieは微小管と結合すること,及びその結合が染色体分離に必要であることを見出した。これらの知見は、Gieが染色体分離における制御を担っていることを示唆している。
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