Syntaxin18は小胞輸送における膜融合に関わるSNAREタンパク質(α-SNAP受容体)の一種であり、小胞体に存在する。申請者は、syntaxin18がアポトーシス促進タンパク質であるBNIP1(BH3-onlyタンパク質の一種)と結合していることを最近明らかにした。本研究では、膜融合装置とアポトーシスの関連を解析し、小胞体膜のダイナミズムとアポトーシスの接点を明らかにするために以下の実験を行った。 1)BH3ドメインとα-SNAPの結合 アポトーシス誘導活性を有するBH3ドメインが、小胞体膜の融合反応に関与するかどうかを調べるために、ドメイン内の全てのアミノ酸をアラニンに置換した変異体を作製し、動物細胞内で発現させた。その結果、BH3ドメイン内のLeu-114がアポトーシス誘導活性のみならず、α-SNAPとの結合にも重要であることが判明した。 2)α-SNAPを介したアポトーシスと膜融合の関連 BNIP1のBH3ドメインがα-SNAPとの結合に関与することから、α-SNAPを過剰発現させればBH3ドメインが立体的にふさがれ、その結果アポトーシスが抑制されることが期待される。これを実証するために、Tet-on系でα-SNAPを誘導するHeLa細胞株を構築し、スタウロスポリン(キナーゼ阻害剤)、ツニカマイシン(小胞体糖転移酵素阻害剤)、FAS抗体によってアポトーシスを誘導したところ、α-SNAPを過剰発現させた細胞ではアポトーシスが顕著に抑制された。一方、syntaxin18結合タンパク質ではあるがアポトーシスに関与しないと思われるZW10の過剰発現ではアポトーシスは抑制されなかった。
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