BNIP1は、アデノウイルスのコードするアポトーシス抑制タンパク質E1B 19kDaタンパク質と結合するタンパク質として同定されていたが、最近、我々はBNIP1が小胞体膜の融合を司るSyn18複合体のサブユニットであり、BNIP1は小胞体膜融合を直接司るタンパク質であることを明らかにした。また、アポトーシスを誘導するドメイン(BH3ドメイン)がα-SNAPとの結合に関与していることも示した。本年度は以下の成果を得ている。 1)BNIP1による小胞体カルシウム貯蔵量の調節の可能性:近年、ある種の小胞体膜タンパク質は小胞体内のカルシウム量を調節することで、アポトーシスを促進することが報告されている。そこで、BNIP1の発現をRNAi法によって抑制し、小胞体内のカルシウム量変化を調べたが特に変化は認められなかった。 2)BNIP1と相互作用するタンパク質の同定:BNIP1をベイトとして用いた酵母two-hybridスクリーニングによって、BNIP1がアポトーシス抑制タンパク質であるMcl-1や小胞体からのタンパク質輸送のための受容体として働いているp24と相互作用していることを見い出した。 3)BNIP1ノックアウトマウスの作製:BNIP1の機能を個体レベルで検証するためにノックアウトマウスを構築した。BNIP1ノックアウトマウスは胎生致死であり、その機能が発生の非常に初期の段階で必要であることが示された。現在、神経や肝臓でのCre/Lox系を用いたコンディショナルノックアウトを行っている。
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