1.ミオシンV重鎖への蛍光色素の導入 Ca^<2+>を加えるとミオシンVの頚部に結合していたカルモジュリン分子が1頚部当たり1分子解離し、ミオシンVの運動能力がなくなると言われている。まず、そのことを1分子アッセイ系で確認することを検討した。我々が以前開発した1分子アッセイ法では、この解離しうるカルモジュリンに蛍光色素を導入しており、Ca^<2+>存在下でのミオシンVの運動は観察できない。そこで、ミオシンVの重鎖に蛍光色素を導入できるかどうかを検討したところ、幸い反応性の高いCys残基が1重鎖当たり1つあることが判明した。ここに蛍光色素を導入したミオシンVをProteinaseKで消化したところ、蛍光色素は65kDaフラグメントに含まれていた。このフラグメントはN端側の重鎖部分であることが既に知られており、且つ、そこにはひとつのCysしか存在しない。アミノ酸配列からこのCysがCys51であることがはっきりした。蛍光色素をCys51に導入しても運動活性は正常に保たれていた。この系を利用してCa^<2+>存在下でのミオシンVの運動(基板に固定したアクチン上)を調べたところ、やはり運動は起こらなかった。 2.無生物の運動 基板に固定したアクチンフィラメント上を個々のミオシンV分子は長距離連続的に一方向に運動するが、ここにプラス電荷をもつアクリルアミドビーズを加えるとそれも一方向に同様の速さで運動することを我々は既に見出している。本研究では、ここにCa^<2+>を加えると何が起こるかを調べた。驚いたことにCa^<2+>存在下でも、ビーズがアクチンフィラメントに沿って一方向に連続的に運動するのが観察された。(1)の研究でミオシンV分子はCa^<2+>存在下で運動しないことが明らかである。従って、ビーズがミオシンVに押されて運動しているのでないとほぼ断定できる。この点を次年度で明確にしたい。それが明確化されれば、アクトミオシン系の運動メカニズムにこれまで考えられていないメカニズムが存在することを示すことになる。
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