1.アクリルアミドビーズの運動 ミオシンVの頭部に蛍光ラベルすることができ、そのラベルはミオシンVの活性に影響しない。カルシウム存在下では、このラベルされたミオシンVは運動しない。しかし、その系に蛍光性アクリルアミドビーズ(正電荷をもつ)を加えると、そのビーズはアクチンフィラメントに沿って一方向に長距離運動する。この発見は非常に意外なものであったので、間違いない現象であることを確認するために多くの観察を重ねた。その結果、運動速度はミオシンVの数分の1であるものの、間違いなく一方向の運動が起こることを確認できた。ミオシンVとビーズを別の蛍光色素で染色し、それらを同時に観察するために、光学顕微鏡の改造を現在進めている。この顕微鏡観察で、ミオシンVはやはり運動せず、ビーズのみが運動することがはっきりした段階で論文にまとめる。 2.ミオシンVのカルシウム制御 本来の目的とは異なるが、上記の研究に関連してミオシンVの運動活性のカルシウム制御機構についても研究を行った。ミオシンVにカルシウムを加えると、1重鎖当たり1個のカルモジュリンが解離する。従って、6つのIQモチーフのうちこの解離するカルモジュリンを結合する特異的なIQモチーフが存在するはずである。その同定を行った。ミオシンVをプロテナーゼKで消化すると、±カルシウムで異なる部位に切断が起こることを見出した。+カルシウムによりカルモジュリンが解離し、むき出しになったIQモチーフで切断が起こるように思われた。詳しい解析の結果、特異的なIQモチーフと次のIQモチーフの境界付近で切断が起こることが判明した。この現象を利用して特異的IQモチーフが同定でき、2番目のIQモチーフからカルモジュリンが解離することが結論付けられた。この成果はBiochemistry誌に投稿した。
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