哺乳類の中枢神経系の速い神経伝達はグルタミン酸受容体チャネル(GluR)により担われる。更にGluRはシナプス形成や記憶学習、さらには神経細胞死などの多彩な神経機能に関与する。従って、生理的・病的状態におけるシナプス伝達機構を理解するためには、GluRの構造を解明することが非常に重要な課題となっている。しかし膜蛋白質、とりわけGluRのような多量体構造を取る蛋白質の精製は容易ではない。本研究では、GluRのN末端ないしC末端部に、非常に安定した多量体構造を取る人工ペプチドを付加するという、全く新しいアイデアにより、構造解析のためのGluRの精製法を開発することを目的とする。 平成16年度は、N末端部に多量体構造を取る人工ペプチドを付加したGluRの構造と機能について検討した。33アミノ酸からなるGCN4ペプチドは、ロイシンジッパー構造を持ち、100℃以上のTmを持った非常に安定な4量体を形成することが知られており、ロイシンジッパー部位の数ヶ所のアミノ酸を変異させると、非常に安定な2量体、3量体を形成する。GluR1のN末端部にGCN4ペプチドを導入すると、その多量体の数により、GluR1チャネル複合体におけるGluR1サブユニットの数が正確にコントロールされることを、密度勾配遠心法により明らかにした。またいずれのGluR1変異体も、細胞表面に正常に輸送されるが、4量体型GCN4をN末端部に導入した時にのみ、正常のチャネル機能が観察されることを電気生理学的に確認した。これらのことから、N末端側に4量体化ペプチドを導入したGluR1を精製することの妥当性が確認された。この成果は現在、論文として投稿・審査中である。
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