我々は世界で初めて開発した胎児への遺伝子導入法、ソノポレーション法を用いて胎児後端、尾部、生殖器の発生メカニズムを研究してきた。すでにソノポレーション法を用いて鳥類初期胚原腸後端を遺伝子導入ラベルする事により、総排泄腔(cloaca)やその周辺間葉の細胞群がコミットし発生することを明らかにしている。またこうした初期胚、原腸後端から発生する際、原腸後端において発現してるBmpリガンド群、nogginなどアンタゴニスト遺伝子が尾部、特に尾部腹側発生に重要な制御メカニズムを有していることを示した。 これらの解析に対応してマウス胚においても解析を進め、nogginミュータントマウスにおいて尾部腹側形成の異常が起こっていること、VER(Ventral Ectodermal Ridge)近傍のVER-tailgut(尾芽)上皮間相互作用にBmp系が機能していること、そしてこれら相互作用が尾部形成に重要であることを初めて示した。これらのことは尾部、並びにその近傍構造として生殖器の形成制御に、上皮間葉相互作用に伴うBmp系が重要な働きを示していることを初めて示したものである。 ソノポレーション法自身の教授に関しては国内外の有力なラボから多くの研究者を招き、セミナー、デモンストレーションなどを行った。国内、ヨーロッパ、アメリカのトップラボから研究者が来訪し、種々の未分化間葉へソノポレーション法を用いて遺伝子導入するメリットについて講習、議論を行った。これらは遺伝子導入法そのものに対しての知見を深め、遺伝子導入法開発、啓蒙にも大きな寄与を行ったものと考えられる。
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