研究課題/領域番号 |
16657055
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
曽我部 正博 名古屋大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10093428)
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研究分担者 |
辰巳 仁史 名古屋大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (20171720)
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キーワード | 内皮細胞 / ストレス線維 / アクチン線維 / 機械刺激 / 脱重合 / メカノセンサー / コフィリン |
研究概要 |
目的: すべての細胞は機械刺激を感知して様々な応答を示すが、その分子機構は謎である。その最大の理由は、メカノセンサーの分子実体やその仕組みが不明な点にある。現在唯一明瞭なメカノセンサーは膜伸展で活性化されるSAチャネルであるが、我々は最近細胞骨格(ストレス(アクチン)線維)がSAチャネル活性化における力の伝達媒体として働くと同時にそれ自身が機械刺激を感知して構造変化するメカノセンサーである可能性を見出した。本研究の目的は、インタクト細胞、セミインタクト細胞、抽出ストレス線維の3つの標本を用いて機械(伸長)刺激に対するストレス線維の動態を解析し、その上下流機構を解明することによって、ストレス線維がメカノセンサーであることを検証することである。 材料と方法: 内皮細胞にファロイジン標識アクチンの注入したのち、細胞をデジトニン処理してセミインタクト細胞を調整し、ストレス線維の崩壊に関わる種々の因子を加えたDKバッファ中で伸展-弛緩刺激を与えて、ストレス線維の崩壊を解析する。 実験結果: 1)セミインタクト細胞はDKバッファー中では伸展、弛緩のいずれの刺激に対しても変化しない。 2)DKバッファーに細胞lysateを添加すると、ストレス線維は伸展刺激ではなく、弛緩刺激に対して速やかに崩壊した。この反応にはCa^<2+>は影響しない。 3)DKバッファー中に、アクチン脱重合因子であるゲルゾリン、あるいはコフィリンを加えると、コフィリンのみが弛緩依存的なストレス線維崩壊を導いた。ATP存在下でトレス線維の収縮力が維持される状況では、この崩壊は一定程度抑制された。 結論: ストレス線維の張力が微少な時には、コフィリンがアクチン線維を脱重合してストレス線維の崩壊を導くことが示唆された。今後、in vitroの実験系でこの仮説を直接検証し、ストレス(アクチン)線維が機械センサーであるという新概念を確立する。
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