有尾両生類の四肢は成体でも完全に再生するのに対し、哺乳類の四肢は指先を除いて全く再生しない。再生が起こらない原因のひとつとして、切断部に再生芽が形成されない可能性を考え、外から幹細胞のような未分化様細胞を補うことを試みた。 未分化様細胞として、まずマウス胚肢芽細胞を用いた。四肢の切断部で起こるシグナル伝達に反応でき、軟骨パターンを作れるという理由からである。 新生仔マウスの掌部を切断し、内部の結合組織、筋肉組織を取り除いた後、解離して再凝集させた肢芽細胞を移植した。宿主との区別のために、移植にはGFPマウス由来の細胞を用いた。 移植後10日で、分岐、分節を含む軟骨パターンが形成された。分節部では、II型コラーゲン量の減少とI型コラーゲンの発現がみられた。この結果から、新生仔マウスの四肢切断部には、凝集された軟骨細胞を四肢パターンに変える環境があると考えられる。 一方、新生仔マウスの四肢を前腕部で切断すると、切断部での細胞増殖、軟骨分化が起こり、肥大化することが判った。またその際に未分化細胞のマーカーであるMsxタンパクの発現がみられた。この結果は、少数ではあるが、未分化細胞の出現を示している。
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