研究概要 |
1)分担者の今福は京都大学大学院理学研究科で暗黒条件下で継続飼育しているショウジョウバエをパールの培地で育てている。これらのハエの眼ERGを測定するべく電気生理学機器の作成を行ない、予備的な結果を得ている。 2)研究代表者の清水は、昆虫や魚類の視物質オプシンの分子生物学的研究を行っているが、約1200世代以上にもわたって飼育されてきた暗黒バエの視物質オプシン遺伝子(NinaE, Rh2)のサブクローニングとシークエンスを試みた。方法としては約30-50匹の個体をまとめて抽出材料とし、発色団のレチナール結合リジン残基を含むExon4部分(約210核酸配列)をRT-PCR法で増幅し、サブクローニングしてシークエンスをみた。その結果、16クローン中の5クローンに変異がみられ、その内3クローンでは推定ペプチドのアミノ酸置換を引き起こす、それぞれ異なる非同義置換の変異がおこっていた。これは昆虫類の既存オプシンの分子進化速度から考えると異常な高頻度といえるものである。一方、対照群のハエで同様の調査(甲南大学で明暗サイクル下で飼育したもの)をすると、24クローン中わずか1クローンに、しかも同義置換がおこっているだけであった。さらにそれぞれの遺伝子の全長について調査し、NinaE〔20,000塩基中23個〕,Rh2とも暗黒飼育バエでは有意にミューテンションが挿入されていることが分かった。ただ、継代したロッドによって結果がことなるので、サンプルをまとめて抽出するのではなく、一匹づつ頭部のmRNAを抽出するなど、実験をさらにすすめている。
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