ギンネムのミモシン分解酵素については、ギンネム葉抽出液より単一精製を達成した。精製酵素は分子量約44kdを示し、V8プロテアーゼ消化産物を電気泳動後に切り出し、アミノ酸配列を決定した所、内部の部分より決定された20残基は既知のアミノ基転移酵素群と有意な相同性を示した。しかし、ミモシン分解酵素の候補として唯一配列が報告されている根粒菌のMidDとはさほど相同性は高くはなく、両者の遺伝子は独立の進化を経てミモシン分解能を獲得したことが推測された。また、酵素学的な性質も、MidD組み換え蛋白と比較した所、KmはMidDの方がギンネムの物より約10倍低い値を示し、またMidDの方が、至適pHではアルカリ性に、最適温度や熱安定性では低温側にシフトしていることなどの違いが見られた。 ミモシン合成酵素については、その候補はシステイン合成酵素アイソザイム群に含まれると予想されるが、ギンネム発芽葉より抽出したRNAを鋳型として、システイン合成酵素ファミリー間で保存されている領域をもとにデザインしたプライマーを用いたRT-PCRと3'RACE法により、システイン合成酵素アイソザイム群の遺伝子に由来すると考えられる部分cDNAを3種類単離した。まだフルサイズはないので、組み換えタンパクとして発現させるには至っていないが、この3種のうち最も豊富に単離されたものについて、重金属による発現誘導が起こることが観察された。 ギンネム群生土壌に住みミモシン分解能を持つミモシン資化性菌については、単離した2種について、16SリボソームDNAの配列を決定し、blastサーチにかけ系統的解析を行った。その結果、1つはSphingomonas属、もう一方はArthrobacter属に含まれることが明らかになった。ミモシン培地で培養したそれらの菌から抽出した粗酵素液を用いて至適pH、温度、熱安定性について調べた所、ギンネムのものより同じ土壌細菌である根粒菌に由来するMidD組み換えタンパクのものとよく似た性質を示した。
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