ミモシン合成酵素については、ミモシン合成酵素がシステイン合成酵素の数あるアイソザイムのうちの一つであることが知られている、そこで、その知見を利用して、システイン合成酵素群で保存されている共通アミノ酸配列をいくつか選んで、縮重プライマーをデザインし、ギンネムとオジギソウのpoly-A RNAを鋳型としてRT-PCRを行い、できるだけ多くのシステイン合成酵素アイソザイムをクローニングし、それらのフルサイズのものを得たのちに、大腸菌で発現させ、ミモシン合成活性を持つものをその中から探索する方策を取ってきた。 その結果、ギンネムより3種、オジギソウより4種のシステイン酵素と思われるDNA断片のクローニングに成功した。そのうちギンネムについてはRACE法によって、それぞれ予想されるアミノ酸残基324および325、推定分子量34.3kDAおよび34.4kDaのタンパク質をコードすると思われるフルサイズのcDNA 2種を得ることができた。それらは、ホモロジーサーチの結果、それぞれSolanum tuberosumの細胞質タイプのものと73%、Nicotiana tabacumの細胞質タイプのものと74%と最も高いホモロジーを示したこと、およびトランジットペプチドを持たなかったことから、細胞質タイプのシステイン合成酵素であると考えられた。 そのうち前者についてORF部分を発現ベクターに組み込んで、大腸菌で組み換えタンパク質として発現させたところシステイン合成活性は発現し、システイン合成酵素であることは確認できたが、ミモシン合成酵素活性については有意に検出することはできなかった。そこで、さらに葉緑体タイプのシステイン合成酵素のクローニングなど、さらに探索を行う必要があることが考えられた。システイン合成酵素遺伝子のクローニング自体は、熱帯亜熱帯植物に限ればおそらく初めてのものと思われる。 植物のミモシン分解酵素については、ギンネムとオジギソウについて、その組織特異的な発現を子葉、成熟葉、茎、根より調製した全RNAを鋳型としてRT-PCRにより転写産物の増幅を試みた。その結果、ギンネムでは成熟葉で最も高い発現が見られた一方で、オジギソウで最も高い発現が見られた組織は茎であったなど、組織特異性に大きな違いが見られ、種による組織または遺伝子の役割の違いが示唆された。オジギソウのミモシン分解酵素およびそれと共通の祖先を持つと思われるシスタチオニンβリアーゼのcDNAクローニングについては6月の第20回国際生化学・分子生物学会議(京都)において発表を行った。 ギンネム土壌に生育するミモシン資化性菌の持つミモシン分解酵素については、Sphingomonas属、及びArthrobacter属のものについてさらに精製を進め、ArthrobacterのものについてN末の一部アミノ酸配列の決定を行った。
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