阪神・淡路大震災における典型的な死傷形態が既往の研究により明らかにされている。それらの結果によれば、この震災での死者のほとんどは、地震動により倒壊した建物が成傷器であり、死因としては胸部や胸腹部を圧迫されたことによる圧死(窒息死)が最も多かった。その発生メカニズムを明らかにするために、CTスキャナーを用いた人体での胸部圧迫実験や、有限要素法による胸部圧迫コンピュータシミュレーションを行なってきた。 本年度の研究では、救急処置トレーニング用シミュレータであるレサシアン・スキルガイドモデル((株)京都科学製)の胸郭内に変位計および加速度計((株)共和電業製)を設置し、準静的荷重および衝撃荷重によって人体に生じる変位・加速度を計測し、CTスキャナー実験およびシミュレーション解析の結果と比較することによって、より正確な胸部の荷重-変位関係を導き出すことを目指すとともに、計測手法の開発を目的とした。 結果として、荷重30kg以下における荷重-変位関係は、変換係数0.46を乗ずることにより、生体を用いた実測結果とほぼ一致することが明らかとなった。また、載荷量を60kgまで増やした場合、荷重-変位量は2次曲線に近似され、荷重50kg辺りからやや曲率を異にすることが確認された。さらに、60mmを超えた範囲での変位量を求めるために、加速度計の適用の可否について検討した。加速度計を用いた変位量計測結果より、変位量-錘落下高さの関係が得られたが、変位量の計測値にはバラツキがみられ、今後の検討の必要性が示唆された。
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