研究概要 |
本研究では、人体エネルギーの一つである最大無酸素パワー(ATP-PC系)とそれに関連する弾性構造に由来する最大弾性エネルギーの測定理論の確立にあった。本研究では、人体下肢を直列粘弾性モデルに置き換えて、そのモデルの定数である減衰振動の周波数(f)、減衰係数(b)、弾性係数(k)を実際の測定データ(フォースプラットフォームの力曲線)から算出し、モデルの最大弾性エネルギー(Eel)、最大無酸素性瞬発パワー(あるいはエネルギー)(Pp)を定量化することであった。 被験者を成人男子7名とし、連続ジャンプ(反動あり)と反動なしジャンプを繰り返し試行させた。反動連続ジャンプでは片足と両足の条件でそれぞれ10回繰り返し、最大荷重の最大値に近い数例を解析の対象にした。被験者は素足で実施した。 その結果、両足ジャンプでのモデルの減衰振動の周波数fは、3.45±0.29Hz、減衰係数bは413.42±41.49N/(mls)、弾性係数kは31.42±4.26N/mmとなり、最大弾性エネルギーEelは72.21±17.47Jとなった。このときの最大無酸素パワーは3831.2±711.2Wであったので、最大弾性エネルギーの貢献は約30%となる。 そこで、Eelが本当に最大無酸素性瞬発パワー時に利用させれいるかの検証として、反動ありのジャンプと反動なしジャンプでのピークパワーおよび平均パワーの差をそれぞれ独立変数として重回帰分析を行った結果、Eel=0.804+0.0202(ピークパワーの差)+0.0182(平均パワーの差),R2=0.820となり、極めて瞬発的なパワー発揮に対して弾性エネルギー(Eel)が関与していることを立証した。 また、筋電図による検証では、ヒ腹筋の筋電図とフォースプラットフォームでの力波形との観察から、着地時には力波形のゆっくりした減衰現象がみられるが、筋電図にはこれと対応した筋活動はなかった。したがって、力の減衰振動の主要なメカニズムが弾性構造であることが示唆された。 平成17年度は競技者を対象に、最大無酸素性瞬発パワー、最大弾性エネルギーからその特異性を明らかにする。
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