遠縁交雑は、異なる種間や属間の交雑によって、新たな遺伝子型を作出しようとするもので、種内交雑では得られない変異拡大の方法である。しかし、異なる種間の交雑のため、生殖隔離機構が働き雑種の育成が困難である。その主要な原因の1つとして雑種胚や雑種胚乳の崩壊がある。これに対し、雑種獲得のために胚培養等の様々な技術が開発され育種に貢献している。しかし、雑種胚等の崩壊の機構は不明のまま現在に至っている。本研究は、アブラナ科作物を材料に雑種胚等崩壊の機構を形態学及び分子生物学的手法を用い解析する。 Brassica napus(西洋ナタネ類)はB.campestris(菜類)とB.oleracea(キャベツ類)を両親とする複二倍体種である。このB.napusとその両親種の間の種間交雑はB.napusとB.campestrisの間は容易であるが、B.napusとB.oleracea間はほとんど雑種が得られないことが経験的に言われている。昨年度B.napeusを母本とし、B.campestris及びB.oleraceaを父本とし、種間交雑を行いB.campestrisを父本としたときはある程度の種子稔性が見られたのに対し、B.oleraceaを父本としたときはほとんど種子が得られなかった。今年度も品種を変え、同様の実験を行なったところB.campestrisを父本とした時は、1交配花当たり9-19個の種種稔性が見られたのに対し、B.oleraceaを父本としたときは全く種子が得られず、昨年度の結果を実証した。さらに逆交雑でも同様のことが見られた。組織の透明化法により胚発達を調査したところ、前者の交配組合せや自殖では10日目に球状胚、13日目に心臓胚、16日目に魚雷胚に発達していたのに比較して、後者の交配組合せでは18日目で球状胚の状態であったり、13日目で致死も観察された。さらに両者の交配組合せの胚珠からmRNAの単離を行い、SSH法で遺伝子発現差異の調査を試みたが、mRNAの単離がうまく行かず、これについては2007年度に実施する予定である。
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