我々はエゾリンドウの越冬芽に特異的に蓄積する蛋白質を十数種類同定した。それらの内の2種類は両者ともα/βハイドロラーゼスーパーファミリーと構造的に類似し、トマトで同定されたエチレン誘導性エステラーゼど一次構造上の類似性が高かった。このファミリーに属する蛋白質の基質として、耐寒性や休眠に関与するアブシジン酸のメチルエステルやジャスモン酸メチルエステルなどの植物ホルモン誘導体、脂肪酸メチルエステル等がある。そこで、我々は上記エステラーゼ様新規タンパク質がホルモン作用を介して耐寒性付与に関わる可能性を検証するために、以下の解析を行うことを目的とした。 (1)酵素活性の確認と基質の同定、 (2)染色体遺伝子の構造決定、 (3)タバコおよびリンドウへの遺伝子導入による耐寒性付与の検証 平成16年度に行った実験および得られた成果は以下のとおりである。 上記(1)については、 (i)越冬芽に特異的に蓄積する蛋白質(W14およびW15)のcDNAをin frameでpET系ベクターのHisタグ下流に連結し、大腸菌でそれらの蛋白質を発現させる系を構築した。 (ii)大腸菌で発現させた後カラムで精製した蛋白質を用いて1-ナフチルアセテートを基質としてエスラーゼ活性をポリアクリルアミドゲル活性染色法で解析した。 (iii)その結果、上記エステラーゼ様蛋白質が実際にエステラーゼ活性を有することが判明した。 今後、アブシジン酸メチルエステル等を基質とした解析を行い、寒冷耐性に関与する植物ホルモンが基質となるか、またW14とW15が酵素化学的にどう異なるのかを解析する予定である。(2)については現在進行中であり、(3)については平成17年度に着手する準備を進めている。
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