本年度は、砂礫地生態系のうち、河川の砂礫地生態系について、先進事例の調査を行い、それに加えて、象徴種となる植物の生態学的な調査と、植物の取り扱いについての調査を行った。 1.ニュージーランドの河川の砂礫地に生息する絶滅危惧種の保全活動 世界の網状河川の3/4はあニュージーランドに集中しているといわれる。このなかのワイタキ川上流のkaki(野鳥)の保全活動を調査した。Kakiは砂礫地にしか生息できないので、100ha規模の人工湿地が4カ所造成されて、野鳥の生息に適した流量調整がされている。卵の人工艀化も行われている。1993年に23個体にまで減少したkakiは2005年には83個体に増加した。日本の河川はニュージーランドと違って護岸が多いのでニュージーランドの事例をそのまま参考にすることはできないから、日本の環境に応じた保全方法を見いだす努力が必要である。 2.カワラナデシコの種子発芽特性 多摩川の砂礫地に生育するカワラナデシコは雌性両全性異株であることが知られている。そこで、両性花種子と雌花種子の発芽特性を比較した。両性花種子と雌花種子はともに温度下降系で緑陰感受性と光要求性を発現し、弱光条件において最も高い最終発芽率を示した。 3.カワラノギクの保全における市民の態度 多摩川のカワラノギクの保全活動を、野生と植栽の程度によって、序列化した。カワラノギクの保全活動は野生さを重視するものから全く人工的なものまで幅があった。野生と人工は連続していて明瞭な差異は認められなかった。 4.発表会 3年間の成果をもとに、2006年11月11日に明治大学生田キャンパスにおいて発表会「石ころでできた自然-その生態と価値-」を開催した。
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