本年度は主にさび病菌サンプルの収集と核酸抽出条件の検討を行った。特にDNAの抽出手法に関して詳細に検討した。第一段階として、ススキさび病菌(Puccinia miscanthi)とメダケ赤衣病菌(Stereostratum corticioides)の罹病組織を横浜国立大学常盤台キャンパスにおいて収集し、それらからの効率の良いDNA抽出方法の検討を行った。菌体部分を微少量取得し顕微鏡下でカバーグラスにより押しつぶして破砕し、プロテイナーゼ処理と有機溶剤抽出により粗核酸抽出物を得、ゲル濾過とアフィニティカラムにより精製2本鎖核酸画分を調整した。さらに、アガロース電気泳動法によりそれらのDNAサンプルの評価を行った。その結果、微量ながわさび病菌ゲノム由来のDNAサンプルの標本を得られることが示された。さらに、メダケ赤衣病菌からは、2本鎖RNAウイルスゲノム由来と考えられる高分子量のバンドも検出された。一方、採種後20年間程度経過した古い乾燥標本を用いた場合では、核酸試料の抽出効率が悪く、満足な結果は得られなかった。しかし、PCR法を用いたDNA増幅を利用すれば、塩基配列比較に供することが可能なDNAサンプルを得ることは十分可能であると考えられた。 今後は微量サンプルに対応可能な実験手法を吟味し、さらに少量の胞子など微量なサンプルからの効率よい核酸抽出方法を検討するとともに、DNA損傷が予想される古いサンプルに関しては、DNA複製・修復酵素による対応を試みる予定である。
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