研究概要 |
1.新しいウイルスBmMLVの複製機構の解析 昨年度ゲノムRNAの構造を決定した結果,新しいウイルスBmMLVのゲノムおよびサブゲノミックRNAの構造は明らかになったが,ウイルスの複製機構はそれらの構造のみでは分からない。BmN細胞には,BmMLVの5'末端配列が繰り返すような構造の奇妙なRNAが大量に存在する。今年度は,BmMLVの複製機構のヒントを得るために,その反復配列RNAの構造を解析した。その結果,CAAAGTCAGC・・・・・・CAAGCTCATGという175塩基からなるユニットが少なくとも3回反復する点で共通していた。しかし,このRNAがウイルスの複製にどのように関与するのか,まだ不明である。 2.ウイルスの由来に関する問題 クワが,ウイルスの起源として推定されるので,東大の圃場のクワの葉からウイルスRNAの検出を試みた。しかし,RT-PCRではBmMLVのゲノムRNAは検出されなかった。 3.コートタンパク質に対する抗体の作製と抗原タンパク質の存否解析 本ウイルスは,ゲノムRNAに3つのORFを持つと予想される。コートタンパク質をコードすると推定されるORF2をバキュロウイルスで大量発現させ,タンパク質を合成した。それらをウサギに免疫してポリクローナル抗体を作製した。ウエスタンブロットの結果,抗体は得られていることが明らかになった。 3.培養細胞株に潜在感染しているBmMLVの比較 NIAS-Bm-aff3に感染しているウイルスの断片配列を,BmN細胞のBmMLVの配列と比較したところ,ほとんど差がなかった。NIAS-Bm-oyanagi1, SES-BoMo-J125K5, NIAS-BoMo-Cam1の3株の配列もほとんど同一であるので,BmMLVには明確な系統分化は起きていないと推定された。
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