ウワバ類は内部寄生バチに寄生された場合、従来鱗翅目幼虫が持つ細胞性防御反応に加えて別の排除システムとして尾節部にコブを形成し体外に排出システムを持っている。今年度は全く予測もしなかった悪い事態に見舞われて研究が遅滞した。ウワバ類は野外ではノゼマに感染している個体が多く存在すると見られ、この微胞子虫にコロニーが感染してしまい排除するだけで半年以上を費やしてしまった。個体群を採集し直しても排除するのにてまどったりしたためである。最近やっと安定してコロニーが維持できるようになったことで研究を進めている。このコブ形成排除システムの研究に適した材料として多くの多寄生バチや単寄生バチを検討した結果、Autographa nigrisigna-Campoletis chrolidae系が最適であるとの判断をした。単寄生バチでも排除できない種としてCotesia plutellaeを見つけたがこれは後に排除できるタイプとの比較に使う予定である。このコロニーの維持と共にコブ形成の要因となる産卵時に注入される物質としては、ovarian fluidが有力であることを突き止めたが、まだノゼマの影響がぬぐいきれず論文にするに至っていない。コブが形成されていく過程は現在電子顕微鏡を使って細胞の動態を明らかにしつつある。表皮細胞の動態の研究を培養系で行うために培養系の確立を急いでいる。
|