日本に1982年に侵入したレンゲ害虫であるアルファルファタコゾウムシ(Hp)は、現在、日本各地で養蜂業に壊滅的な被害を与えている。この昆虫を防除するためにヨーロッパトビチビアメバチ(Ba)がアメリカから導入され、1992年から福岡県、大分県、宮崎県、鹿児島県で野外放飼が行われている。本研究では、GIS(地理情報システム)を利用して、マクロな視点でのBaの定着・分布拡大プロセスを解明し、任意の場所にBaを放飼した場合にBaがどのように分散するかを時間・空間的にシミュレーションできるプログラムを開発することを目的としている。 Baの定着、分散パターンのトレースを行うために門司植物防疫所が1992〜2003年までに行った野外調査結果を用いた。北九州市におけるBaの放飼地点と、放飼地点を中心とするBaの定着地点・未定着地点の変遷を172箇所について解析を行った。昨年度に開発した分散シミュレーション・プログラムの中で、定着地における気温情報と分散能力の評価法に改良を加え、より、再現性の高いプログラムを作成した。プログラムで使用するパラメーター数を増やし、昨年度よりも、試行数を大幅に増加させてシミュレーションを行い、より再現性を向上させた。 なお、パラメーターの設定にあたっては、野外および室内におけるタコゾウムシの分散行動を写真で撮影し、行動を解析することによって、定量的な値を求めた。
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