研究課題/領域番号 |
16658026
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
加藤 義臣 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50052270)
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研究分担者 |
上遠 岳彦 国際基督教大学, 教養学部, 講師 (10245657)
塩見 邦博 信州大学, 繊維学部, 助手 (70324241)
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キーワード | チョウ / キチョウ / 翅斑紋パターン / 低温ショック / 休眠ホルモン / タングステン酸ナトリウム / 免疫染色 / ドーパ脱炭素酵素 |
研究概要 |
キチョウ類における翅過剰黒色化(翅背面)のしくみを明らかにする目的で、脱皮直後の蛹への、低温(0℃)処理、蚕休眠ホルモン(DH)投与細胞内情報伝達撹乱薬品(タングステン酸ナトリウム)投与の影響を調べた。 1.0℃および4-8℃の低温で2時間処理したところ、0℃の低温処理が有効であった。 2.蛹の左側または右側のみを部分的に2時間低温処理したところ、過剰黒色化は処理側の翅において高い頻度で発現した。 3.本研究の申請段階において、蛹への休眠ホルモン投与が翅の過剰黒色化を誘起することを述べた。そこで、低温麻酔ではなく、エーテル麻酔した蛹にDHを投与したところ、意外にも黒色化は生じなかった。 4.DH抗体(N末及びC末抗体)により幼虫及び蛹の脳-食道下神経節、および腹部神経節を免疫染色したところ、N末抗体には反応しなかったが、C末抗体には強く反応した。反応細胞はカイコガのDH産生細胞の部位に対応していた。しかし、低温処理により免疫染色強度に差はなかった。 5.一方、タングステン酸ナトリウムは翅腹面の黒色パターンに影響したが、その発現パターンは低温処理の場合とは異なっていた。 6.低温ショックはまた、翅サイズ(特に、後翅サイズ)の顕著な減少を引き起こした。 7.これらの結果は、(1)低温ショックは最初の予想とは異なり、DHを介さずに直接翅の色素発現に影響していること、(2)それは薬品による黒色化とは異なるシステムによることを示唆する。 8.翅のメラニン色素形成の過程やドーパ脱炭素酵素遺伝子の発現解析は現在進行中、または今後予定している。さらに、翅サイズ減少のしくみの解析も今後行ってゆきたい。
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