研究概要 |
1.イオンクロマトグラフ(溶離液:30mM(NH_4)_2CO_3、陰イオン交換カラム:EXCELPAK ICS-A23)とICP-MSを接続しI^-とIO_3^-の分別定量法を検討した。このイオンクロマトグラフ/ICP-MSシステムによって試料中の無機態ヨウ素(I^-,IO_3^-)の分別定量が可能になった(検出限界:0.1〜1μg/L)。 2.この無機態ヨウ素の分別定量法を用いて、灌漑水および田面水中のヨウ素の化学形態変化を調べてところ、灌漑水中のヨウ素濃度は1μg/L程度でその形態はIO_3^-が主体であった。田面水の全ヨウ素濃度は灌漑水よりも数倍程度高い値を示したが、IO_3^-は検出されなかった。また全ヨウ素濃度のうち無機態(I^-、IO_3^-)が占める割合は低く、無機態以外の形態が80%以上を占めた。灌漑水中のヨウ素は水田環境において無機態以外に形態変化すると考えられた。 3.イネによるI^-,IO_3^-の吸収と茎葉部移行過程における化学形態変化を調べた。I^-またはIO_3^-を水耕液に添加してイネを栽培し、茎基部を切断し溢泌液を採取して、溢泌液の全ヨウ素および無機態ヨウ素濃度を分析した。その結果、水耕液に添加したI^-,IO_3^-は安定で実験中に化学形態変化しなかったが、水耕液中のヨウ素濃度は設定ヨウ素濃度よりも低い値を示した。特にアンモニア培地のIO_3^-処理区で低く約1/2の濃度であった。I^-処理区では溢泌液中に全ヨウ素濃度で数十μg/L程度のヨウ素が検出され、75%以上がI^-の形態であった。一方、IO_3^-処理区は溢泌液中の全ヨウ素濃度は4μg/L以下でI^-処理区の1/10程度であった。IO_3^-はほとんど吸収されていないか、根部組織に強く吸着され茎葉部に移行しないと考えられた。I^-処理区でIO_3^-が検出されることはなかったが、IO_3^-処理区では、硝酸、アンモニア培地区ともに水耕液中には認められなかったI^-が検出された(0.75μg/L)場合があった。植物体中でIO_3^-がI^-に還元されている可能性が示唆された。
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