トマト青枯病は、全国各地で多発しているRalstonia solanacearumを病原菌とする難防除土壌伝染性病害である。本研究では、これまで全く考慮されてこなかったR.solanacearumに対するファージを土壌から分離し、ファージの遺伝学的性質を解明するとともに病原菌と近縁の各種細菌に対する感染範囲(溶菌スペクトル)を明らかにすることを目的とした。今年度、トマト連作圃場からR.solanacearum YU1株に対するファージKF1株を分離した。 本菌は、エンバクかさ枯れ病菌Pseudomonas syringae pv.coronafaciens SUPP196(AVPCO8101)、グレープフルーツかいよう病菌Xanthomonas campestris pv.citri SUPP965(citru802)、イネ白葉枯れ病菌Xanthomonas oryzae pv.oryzae SUPP1990(ORXH1)に対しても感染能を有することが判明した。 トマト青枯病菌が下層土でもよく生残できることから、冠水に伴うKF1株の土壌中の移動性を検討した結果、堆肥を多量に投入し土壌孔隙の良く発達した土壌での移動性は高かったが、化学肥料を連用し容積重の大きい土壌ではKF1株はほとんど土壌に吸着されて、下層への移動が認められなかった。本結果から、前もって耕起し、土壌孔隙を発達させた土壌にKF1株を散布するのが、下層土のトマト青枯病菌の制御に有効と判断した。
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