未分解の有機物が堆積して形成される泥炭地は、炭素や窒素のシンクとしての機能を有し、近年大きな問題となっている二酸化炭素・メタン・亜酸化窒素などの温暖化ガスの捕捉系として重要な機能を果たしている。世界的に見ると、泥炭地の分布は亜寒帯と熱帯に集中しているが、その面積は広大で、地球規模での環境変動に大きく寄与すると考えられている。 本研究では、現存の湿地の保全による温暖化ガスの放散抑制、および破壊された泥炭地の復元と新たな泥炭地の創成による温暖化ガスの封じ込めの可能性についての予備的調査を行った。 まず、泥炭形成植物を利用した圃場実験を行い、植物群集の遷移プロセスについて検討した。泥炭形成植物を、プラスチック容器の中で、栄養塩溶液のみを用いて育成した実験の結果、北海道根室地域、および新潟県桝潟周辺から採取したミズゴケ及びハイゴケ群集から、いずれもイグサ属植物の優占する群集に遷移し、安定した植物群集が形成された。このことから、屋上緑化などの目的のためには、イグサ属植物群集の利用の可能性が示唆された。 次に、泥炭形成植物の炭素固定速度と放出速度を水分環境・気象条件との関連で解析する目的で、光合成測定装置を組み立て、イグサ属植物、ミズゴケ類、ハイゴケ類、およびイシクラゲ(ラン藻)の大気炭素固定速度を、光、温度、土壌化学性などの環境との対応から評価するための測定を開始した。この測定は、現在進行中であり、17年度に継続して実施する。
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