研究課題
本研究ではストレス応答的に高い耐凍性を発揮するヒメツリガネゴケ原糸体細胞の一次形質転換体を用いることにより、植物からの低温耐性因子のスクリーニング系の確立と遺伝子の単離を行うことを目的とした。本年度は凍結耐性を獲得できないsds変異株を用い、この変異体に対する形質転換系と、遺伝子導入による凍結耐性の変化の評価系の確立に主眼を置いて研究を進めた。sds変異株は野生株と異なり、ストレス処理による誘導によっても耐凍性が上昇することはない。そこでこの変異株におけるタンパク質及び糖解析を行い結果を野生株と比較したところ、それらの蓄積に大きな違いが見られた。変異株では、低温誘導性のCAP160様遺伝子やデハイドリン様タンパク質遺伝子の発現が、著しく減少していた。タンパク質解析においてもこれらの減少を支持する結果が得られた。また、糖の解析では、凍結耐性と相関して蓄積する3糖テアンデロースの蓄積量が野生株と比べて低く抑えられていた。昨年度までに、凍結耐性を指標としたコケ細胞のストレス耐性評価法の有用性を野生株において示した。そこで本年度は、野生株において耐凍性を著しく上昇させる転写関連因子PpABI3遺伝子をsds変異株に導入し、凍結耐性の変化を調べた。その結果、野生株と同様、sds変異株も-10℃の凍結に耐えてコロニーを形成することができた。これらの結果は、本研究で用いたコケ形質転換系が、ストレス耐性変異を相補する遺伝子の探索にきわめて有効であることを示唆する。
すべて 2005
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Planta 220
ページ: 414-423
Journal of Plant Physiology 162
ページ: 169-180