研究概要 |
本研究課題は、分子細胞生物学的研究手法を駆使してイネ細胞において核ゲノムにコードされている酵素タンパク質のプラスチド(葉緑体・アミロプラスト)への局在化機構を検討し、プラスチド構成タンパク質の新規な局在化機構の存在を明らかにすることを目的としている。対象としている酵素タンパク質は、プラスチド局在化に関わる典型的なトランジットペプチドを有しないヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ(OsNPP1)およびα-アミラーゼI-1(AmyI-1)である。平成16年度の研究から、OsNPP1およびAmyI-1はともにイネ緑葉細胞の葉緑体と細胞壁区画に局在すること、またAmyI-1においてはタマネギ鱗片葉表皮細胞のプラスチドに局在化することを突き止めた。本年度は、タマネギ細胞系を用いて、AmyI-1と緑色蛍光タンパク質の融合タンパク質(AmyI-1-GFP)のプラスチドへの局在化経路を明らかにすることを試みた。解析手法としては、小胞体-ゴルジ間輸送に関与するGTPase(Sar1とArf1)のドミナントミュータント(Arf1(T31N), Arf1(Q71L), Sar1(H74L))によるプラスチドターゲティング阻害実験を用いた。AmyI-1-GFPとプラスチドマーカーWxTP-DsRed並びにドミナントミュータントをタマネギ細胞に同時に導入し、AmyI-1-GFPの細胞内局在を調べたところ、プラスチドターゲティングはほとんど起こらなくなり、AmyI-1-GFPの蛍光は小胞体ネットワーク構造に分布することが分かった。これらの結果から、α-アミラーゼI-1は、小胞体で合成され、ゴルジ複合体を経由してプラスチドに局在することが強く示唆された。
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