研究概要 |
二本鎖のRNA分子(dsRNA)を細胞に導入することにより、相同な配列をもつ遺伝子の発現抑制する現象、RNA干渉(RNAi)が多くの生物種において機能していることが知られている。しかし、GUSやGFPのような外来性の遺伝子の場合と、もともとゲノムに存在する内在性の遺伝子では、標的配列の外側へtransitive RNAi、全身へのsystemic RNAiの発生に違いがあることが明らかになりつつある。このRNAiにおける内在、外来の遺伝子の識別機構を明らかにするために、実験を行なった。1)内在遺伝子を外来遺伝子化することにより、内在と外来遺伝子の識別機構を解析することを目的に、3'UTR配列に対するdsRNAによってpsbP遺伝子群の1A,5B遺伝子(グループI)を発現抑制したタバコの植物体に、新たにこのdsRNAの標的となる3'UTR配列を持つpsbP_1A遺伝子を形質転換によって再導入した。すでに目的の形質転換ラインを確立し、現在、標的となる3'UTRからのtransitive RNAiの発生、systemic RNAiの伝播、DNAメチル化の有無の解析を進めている。2)内在遺伝子においては、systemicなRNAiが機能していないことをPsbP遺伝子(グループIならびにII)をそれぞれ特異的に発現抑制した形質転換体を相互に挿し穂、台木として作製した挿し木をウエスタン解析、ノザン解析することによって確認した。3)タバコプロトプラストを用いた一過的発現系によってtransitive RNAiを検出する系を立ち上げた。この系を用いて外来遺伝子配列上でtransitive RNAi様の活性が認められることを確認した。続いてこの系において、内在遺伝子配列上におけるtransitive RNAiの有無を解析するためのベクターの作製を行った。
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