研究概要 |
アロメラニンは、1,8-ジヒドロキシナフタレン(DHN)の酸化的重合により生合成される高分子化合物である。最も重要な段階である酸化的重合反応は、アロメラニンを持つ菌類などの生物体により生産されるフェノールオキシダーゼが果たしているとされている。フェノールオキシダーゼの中では、特に酸素分子を電子受容体とするラッカーゼが大きな役割をもっていると報告されている。今年度は、DHNより酸素原子一つ少ないモデル化合物として容易に入手できる1-ナフトール(NP)を用いて、その粗酵素を用いる酸化的重合反応について特に解析した。この反応を触媒するラッカーゼは、イネいもち病菌(研53-33)をジャガイモ-スクロース培地で振盪培養し、培養初期の3日から4日目にその活性がもっとも高いことが判明した。この培養初期の培養ろ液中に分泌される粗酵素液を用いてNPを反応させると徐々に重合して紫色化するとともに、不溶性の着色した生成物が沈殿として生成し高分子化した。この沈殿物はメンブランフィルター上に取り出すとそのフィルターに強く付着し、乾燥させても粉末にはならず漆のような光沢あるコートが形成された。一方DHNは、化学合成して調整したDHNを用いて、いもち病菌の平板培養したコロニーの周辺部に置床すると、黒色化してアロメラニンの形成がみられた。またNPと同様に培養ろ液中の酵素による重合反応をおこなった結果、黒色のアロメラニンが形成された。NPと比べてDHNは、反応性が高く、DHNを単にスライドグラス上に置き空気中に放置しただけでも時間がたつと黒色化した。また、アロメラニン分解菌としてPhanerochaete chrysosporiumを入手し、現在この菌によるNPおよびDHNの重合物の分解実験を行っている。
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