研究概要 |
アロメラニンは、菌類の生産するメラニンの一種で、1,8-ジヒドロキシナフタレン(DHN)から酸化的重合反応により生成する黒色の重合体である。本研究では、特にいもち病菌のアロメラニンについて研究した。アロメラニンの形成反応として、いもち病菌のコロニー周辺部に化学合成により調整したDHNを置床すると、そのコロニーの周辺部において黒色化がおき、またDHNの生合成中間体であるscytaloneでも黒色化反応が起こり、DHNの関連化合物である1-naphtholでは紫色化反応が起こることを昨年度観察した。2-naphtholでは、色素形成はないが、その1位で2量体化したダイマーを形成したことから、これらの反応がフェノールオキシダーゼによるラジカル形成を伴う重合反応であると思われた。今年度は、DHNから形成されたアロメラニンを原子間力顕微鏡(AFM)により観察するためにカバーグラス上およびHOPG(高配向熱分解グラファイト)上で形成させることを試みた。得られた黒色化ポリマーをAFM観察にかけたが、分子分解能の規則構造を探るまでには至らなかった。DHNからのアロメラニン形成反応を分子レベルで制御する工夫が必要である。ついで、DHNから生成したアロメラニンを培地に添加して、メラニン分解菌として知られているPhanerochaete chrysosporium菌を接種し分解実験を試みているが、培地中の色素の明確な脱色反応はこれまでのところ観察されていない。今後、本菌を用いてアロメラニンを分解させるためのアロメラニン添加量や培養条件等について検討する必要がある。アロメラニンの熱分解GC-MS解析までにはいたらなかった。
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