研究課題/領域番号 |
16658048
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
米山 弘一 宇都宮大学, 野生植物科学研究センター, 教授 (00114174)
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研究分担者 |
福井 泰久 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00181248)
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キーワード | 根寄生植物 / cAMP / 発芽 / 情報伝達 / プロテインキナーゼ / 発現解析 / アデニレートシクラーゼ / ジベレリン |
研究概要 |
クロロフィルを持たず、栄養水分のすべてを宿主に依存する全寄生性根寄生植物ヤセウツボ(Orobanche minor)から、植物には存在しないとされているcAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)様遺伝子、PKA1、PKA2を単離した。PKA1、PKA2の部位別、時期別の発現解析を行った結果、PKA1は種子の前培養(コンディショニング)後期から発現し始め、発芽後その発現量が徐々に低下した。一方PKA2は種子には発現しておらず、花茎、花(蕾)など、生長の盛んな組織に特異的に発現していた。以上のことから、PKA1とPKA2はそれぞれ、発芽および細胞増殖・伸長に関与しているものと考えられた。 PKA1遺伝子を調節サブユニットと共に酵母細胞で発現させ、PKA1がプロテインキナーゼ活性を示すことを確認した。PKAの抗体作成とそれを用いた免疫染色による発現部位、時期の解析については現在検討中である。 アデニレートシクラーゼやPKA阻害剤はヤセウツボの発芽、幼根伸長に対して阻害的に作用しているようであったが、恐らく種子への取り込みが悪く、明確ではなかった。今後、処理方法を変えて再検討する予定である。 ヤセウツボ種子のcAMPレベルを定量した結果、PKA(特にPKA1)の発現量と極めて高い相関関係が認められた。また、種子を前培養中に光や高温に曝すと発芽率が低下し、その低下はジベレリン投与によって回復するが、cAMPレベルも発芽率に対応した変動を示した。以上のことから、ヤセウツボの種子発芽の制御に、PKAが重要な役割を担っていることが明らかとなった。今後、オロバンキ以外の寄生植物、さらには一般の植物について、発芽におけるPKAの関与の可能性を探る予定である。
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