研究概要 |
本研究は、突然変異をもたらす異常なDNA複製(error-prone損傷バイパス複製)をヒト細胞に於いて検出する系を用いて、そこに食品や嗜好品成分等を添加して、突然変異を抑制し、がん細胞を細胞死に導く成分をスクリーニングするものである。現在までに、18品目を添加し又、検出にあたっては、1品目、3dose以上の点を取った。genistein、daidzein、qercetin、anthocyanidin、resveratrolなどのフラボン類、及びcurcuminについて,有意な結果を得たが、より詳細に検討すると、これらの多くはDNA鎖切断活性を持ち、見かけ上、損傷バイパス複製を阻害したかの様に見えるに過ぎないことが判明した。(しかし、daidzeinの様にDNA鎖切断活性を検出できなかったものもあり、複雑である。)これらのDNA鎖切断活性(遺伝子傷害性)は抗酸化活性と、おそらく表裏一体のものであり、添加濃度や代謝(活性化)の有無、細胞内環境によって、どちらかとして現れると考えられる。又、proteasome阻害活性やCOP9 signalosome kinase阻害活性があると発表されているもの(各々、genistein、curcumin)もあるが、細胞レベルで検出する場合、それらの食品機能性と関連するかもしれない作用は、遺伝子傷害性と切り離すことは難しい。 抗酸化機能のある幾つかの食品成分(ascorbic acid、genistein、qercetin、curcumin)について、DNA鎖切断作用が検出された。大体は,生体内では通常起き得ない100μM以上のdoseでの結果であるが、curcuminの様に25μM程度で検出されたものもある。これらのDNA鎖切断作用の検出はアルカリ性蔗糖密度勾配遠心法を用いているが、最も検出感度の良いアルカリ性コメット法を用いれば、数μMでも検出できるかもしれない。resveratrolの様に、部分的にはerror-prone損傷バイパス複製を阻害していると考えられるものもあったが、DNA鎖切断作用を伴っていて、損傷バイパス阻害活性のみを捉えることは出来ない。今後、更に研究費を得て、抗酸化作用を持たない機能性成分を添加して行きたい。
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