研究課題
開放系CO_2増加実験(FACE)を用いて、樹木個体を基礎にした蒸散機能へ及ぼす高CO_2の影響を評価した。火山灰土壌と褐色森林土壌に生育する落葉樹数種の蒸散特性を、植物生理学・樹木解剖学的に解明ることを目的とする。特に、高CO_2と通常CO_2条件に置かれた数種の植物種に関してSPAC(土壌-植物-大気-連続体)の視点から、気孔の環境応答に注目して計測を実測する。火山灰土壌に生育する植物に関しての実験は、世界初の試みと言える。従来の研究から、高CO_2条件では気孔コンダクタンス(通水能力)は抑制されることが指摘されているが、未成熟火山灰起源の土壌条件を特徴とする北海道の代表的樹種の蒸散特性を、その場(in situ)で測定した。高CO_2環境では植物の水の利用効率か上がるので、土壌面の土壌含水率は高かった。さらに、高CO_2ではLAIが大きいため、土壌面へ到達する日射量が低下したのでこの傾向が促進された。広葉樹の場合、水利用効率が上昇する事によって通水を担う道管の直径が小さくなると考えられる。予備試験の結果、散孔材のシラカンバ・ウダイカンバではこの予測は支持されたが、道管径の太いハリギリでは明確ではなかった。この点は最終年の成果として確認したい。葉の構造には、散孔材のシラカンバ、環孔材のミズナラの水環境への応答をP-V曲線(葉の水環境への適応能力を調べる方法)を測定して調べた。飽水時の浸透ポテシシャル(ψS^<sat>)と圧を失うときの水ポテンシャルを推定したところ、ミズナラでは飽水時の浸透ポテンシャルの差は両土壌条件においても見られなかった。また圧を失うときの水ポテンシャルも同様に差は見られなかった。一方で,シラカンバでは飽水時の浸透ポテンシャルが火山灰土壌で有意に底い値を示し,圧を失うときの水ポテンシャルは火山灰土壌で低い傾向を示した。しかしCO_2条件による差は見られなかった。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (1件)
日本森林学会北海道支部論文集 54
ページ: 49-51
ページ: 64-66
Phyton (Horn, Austria) 45
ページ: 133-138
Physiologia Plantarum 125
ページ: 64-73
森林科学 45
ページ: 4-10
ページ: 145-152