流砂は多数の個別の粒子からなる集合体(粒状体)の運動の一形態と考えられ、ある領域にわたって統計をとるとその運動は一定の法則のもとにある。このことは、これらの運動が連続体として近似可能であることを示しているが、その力学については十分な議論がなされていない。 本研究は、連続体としての流砂運動の力学体系の構築を目的とするもので、土石流、掃流砂、浮遊砂のメカニズムに関する研究成果の現状をレビューし、流砂現象を連続体として取り扱う利点について整理し研究の方向性と課題を明らかにしようというものである。 今年度は、研究会を開催し流砂現象に関する研究のレビューを行い、流砂の力学としての問題点に関する意見交換を行った。その結果、掃流砂では粒子個別の運動を追跡する方法と連続体としての取扱にかなりの隔たりがあり、特に移動限界付近で共通の力学的視点を確立できる状況にはないこと、浮遊砂では拡散モデルが用いられているが、その理論的不合理さと粒子の運動の統計的性質が必ずしも拡散モデルと一致しないこと、また、掃流砂との力学的フレームが接続しないことが議論された。また、比較的混相流としての取扱が可能と思われる高濃度の流れに対しても、典型的な土石流についてはかなり力学的フレームがはっきりしてきた感があるものの、乱流への流れの遷移や粒径への依存性など、まだ不十分な状況にある。 これらのレビューの一方で、掃流砂を含む流れへの連続体力学としてのアプローチの一例として、理論河床の取扱や移動限界についての解釈について検討を行った。これまで、移動床では、理論河床は粒子頂部から1/4粒径ほど下方にあるされてきたが、連続体力学からのアプローチでは、理論河床の位置は無次元掃流力に比例し、かつ河床勾配に依存することが示された。これら成果の一部は国際会議において発表の予定であるほか、関連学会で発表してゆく。
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