研究概要 |
室内において4年生クロマツ40本を供試してマツノザイセンチュウ進入にともなう幹呼吸速度増大の原因について研究した.センチュウ接種後の移動速度と呼吸速度をモニターした結果,呼吸速度の増大が生じた部位では必ずセンチュウの存在が認められた。また,加害性の異なるセンチュウを接種したところ加害性の強いセンチュウは移動速度が早く,呼吸速度の増大も早く生じた.以上のことから,センチュウ接種に伴う幹呼吸速度の増大は,センチュウが移動した部位において異常呼吸が生じることが原因であることが判明した.さらに,異常呼吸の原因について究明するために,毒素とされるセルラーゼと安息香酸を接種した結果,セルラーゼには呼吸増大の機能が認められた.このことから,異常呼吸の原因は,センチュウの物理的加害か,あるいは毒素物質であることが示された. 野外において,7年生クロマツ30本を供試して電撃装置による印加実験を行なった.電撃印加の条件は18000V,20mAとし,3分間隔で1秒間の印加を行なった.同時に,その効果を評価するために,樹脂滲出,呼吸速度,生存率について調査した.その結果,電撃印加を行なった個体では,樹脂滲出低下に遅れがみられ,また,呼吸速度については増大が遅れるか,あるいは変化が見られない個体が見られた.生存率については,接種後2ヶ月目で,対照木が0%,電撃印加木が50%であった.以上の結果から,電撃印加はセンチュウの移動と増殖を制限し,樹脂滲出の低下や呼吸増大を抑えること,つまり,マツ材線虫病の進行を抑制する効果のあることが明らかになった.しかし,防除法として確立するためには,さらに電流の強さや印加時間の再検討が必要であった.
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