本研究は過熱水蒸気を用いた木質資源の炭化および炭化物の高機能化技術を確立するとともに、揮発性熱分解産物(留出液)の改質方法を提示することを目的とする。はじめに、炭化ガス化用小型反応装置の設計および製作を、試験時の水蒸気回収率を基軸として、炭化炉やガス化部、ガス化室設置法等に改良を重ね、プロセス回収率の向上を図った。その結果、炭化ガス化用小型反応装置として、水蒸気回収率が95%以上の装置を製作することが出来た。これより本研究では、間伐材等の林産廃棄物利用促進と新規のバイオマスガス化・炭化技術開発に焦点を移し、開発した装置を使い、炭化条件を変えて産物の物性等を測定・検討した。その結果、以下の知見が得られた。 本装置を用いて5mm四方カラマツチップに対して、水蒸気雰囲気、炭化温度600℃、炭化時間1時間の条件で炭化を行った結果、湿気の少ない、状態(形・色・光沢)の良好な炭化物を製造出来た。この試験では、水蒸気処理は窒素処理よりも炭化が進んだ結果を得た。次に水蒸気処理時の、よう素吸着性能を計測した。その結果、活性炭と木炭の間に位置する吸着性能を有する炭化物を製造出来た。更に、カラマツチップに対して水蒸気雰囲気、ガス化温度800℃、ガス化時間1時間の条件でガス化を行った結果、水蒸気処理した場合には窒素処理した場合よりも高濃度の水素を含む燃焼性ガスが得られた。以上より本実験から、十分に炭化ガス化が行える装置を製作できた。また過熱水蒸気を使うことにより、高品質の炭化物および燃焼性ガスが同時に生産できる可能性が示された。
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