本研究では、森林系バイオマスの過熱水蒸気による熱化学的変換法に関する基礎データの収集を目的として、反応装置を設計・製作し、過熱水蒸気および窒素雰囲気下におけるカラマツ木材チップの炭化・ガス化を行うことにより、次のような知見が得られた。 木材チップ200gから得られた炭化物の収率は、水蒸気処理炭化物が32.47%、窒素処理炭化物が34.33%で、同時に回収された発生ガスの量は水蒸気処理が97.8l、窒素処理では150.2lであった。これらの値から窒素分を除くと、それぞれ約79l(水素25%)および81l(水素17%)となった。 炭化物の性状に関しては、窒素吸着試験結果などから、水蒸気処理炭化物は微細孔が比較的発達しているが、窒素処理炭化物では未発達であること、いずれの炭化物も市販の木炭とは異なった性能を有していることが示唆された。 発生ガスについては、窒素処理と水蒸気処理との間に顕著な差は見られなかったが、2段階加熱処理によって水蒸気処理では約46%がガス化し、窒素処理では約41%がガス化した。これらの結果は従来の炭化処理において、通常600℃の炭化で発生するガスの割合が21.0%(炭が27.7%、留出液が51.3%)であることを考えると、本装置でのガス改質による効果と判断される。したがって、本装置を用いることによりタールの大部分を燃焼性のガスへ変換し得ることが明らかとなった。 以上の結果から、本装置は過熱水蒸気による炭化・ガス化を行うにあたり十分な性能を有することが確認された。あわせて、炭化物の分析と発生ガスの成分分析により、過熱水蒸気による熱化学的変換法に関する基礎データの収集を行い、過熱水蒸気による熱化学的変換法に関する実用的可能性を評価することができた。
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