研究概要 |
長崎大学グループでは、本年度はモーメント法を用いて数値シミュレーションを行い,木材断面内の水分分布の模様によりマイクロ波の散乱パターンがどのように変化するかを検討した。13.5cm×13.5cmの角柱断面を4.5cm×4.5cmの小ブロックに区切り、その内の一つに水分が多く含まれる場合を想定し、9個の水分分布パターンについて検討した。柱軸方向に平行な電界を持つTM平面波で角柱を照射し、その散乱電界強度を角柱中心から半径36.2cmの円状に配置した7個の受信点で求めた。含水率が低いブロックの比誘電率をε_r=2、含水率が高いブロックの比誘電率をε_r=5とした。全てのブロックの含水率が低い場合の散乱電界強度をそれぞれの水分分布パターンに対応する散乱電界強度から引いた散乱電界強度差は含水率の高いブロックの位置に大きく依存することが数値シミュレーションにより明らかとなった。この結果は、マイクロ波の散乱パターンを計側することにより木材断面内の水分分布が推定できる可能性を示している。静岡大学グループでは、研究課題に対応したマイクロ波自由空間側定技術による側定システムを完成させ、装置の性能検査を行った。完成した側定システムは一辺600mm、高さ600mmの正8面体柱構造であり、マイクロ波8.2〜12.4GHzの帯域において、その透過波および反射波をダイナミックレンジ30dBで測定可能である。現在は金属パイプおよび木材(丸太)を被測定試料として装置の性能を検査しているところであり、平成17年度の研究に向けて、本研究課題の対象物についての実験的基礎固めを行っている。また,試験体分割-全乾法による木材内部の水分分布を計測する実験方法について、適正分割の方法および水分の二次元分布の表示方法を検討した。来年度は、これらの結果をもとに散乱界パターンから水分分布を推定するアルゴリズムを開発し、数値シミュレーション及び実験によりその有効性を確認する予定である。
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