研究概要 |
1.実験用魚礁の設置 京都大学フィールド科学教育研究センター芦生研究林から、長さ1.5m、太さ10〜15cmの広葉樹48本(ブナ、ミズメ、アオハダ、カエデ等7種)、針葉樹48本(スギ)を切り出し、4本を1段とした井形4段に組んで、広葉樹、針葉樹各3基の間伐材魚礁を作製した。対照区として、同じサイズの塩化ビニール製パイプによる魚礁3基を作製した。これら9基の実験小型魚礁を、舞鶴水産実験所近くの水深8m付近に交互に設置した。 2.調査と観察 魚礁を2004年5月に設置し,以後毎月2回の潜水観察により,周辺に集まる魚の種類,体長および数を目視観察により記録した。また、採泥、プランクトン採集、採水、水温、塩分、照度測定等を定期的に行った。 3.調査結果 水質(溶存態窒素、リン酸)、底質、環境について、3種類の魚礁間で有意な差は認められなかった。魚礁に蝟集する魚種数は水温と密接に関係し、高水温期に多く低水温期に減少した。針葉樹(スギ)魚礁には、設置直後からメバル等の魚が多数寄りつき、以後一貫して他の魚礁よりも多くの種類と個体数の魚が集まっている。これまでの調査において観察された魚の種類数は、針葉樹、広葉樹およびパイプ魚礁でそれぞれ、平均8.0、5.7および4.0種類であった。針葉樹魚礁の表面には刺胞動物が多数付着しており、これらをカワハギやウミタナゴ等の魚が摂餌する様子が観察された。針葉樹魚礁は、単に隠れ家となるだけでなく、底生付着生物の付着基質となりやすく、これらを餌とする魚類に餌場を提供することにより、魚類相の多様性の向上に貢献していると考えられた。
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