研究概要 |
2年間にわたり1ヶ月2回の潜水調査を行い、9基の魚礁に蝟集した魚類、合計41種、15,190個体を観察した。もっとも多かったのはメバル638個体であり、ほとんどの個体がスギの魚礁に集まっていた。ついでマアジ、シマハゼ、アミメハギなどの魚種が多く観察された。昨年と同様に、スギ魚礁で最も多くの魚種(平均4.7種)が観察され、ついで広葉樹魚礁(3.8種)、塩化ビニール製パイプ魚礁(3.1種)の順であった。しかし、初年度に明確であったこれら3種類の魚礁間の差が、2年目にはかなり縮小し(初年度は、5.4,3.7,2.7種)、個体数ではスギ魚礁と広葉樹魚礁間に有意差は認められなかった。また、魚種数、個体数ともに2年目は初年度よりも減少した。蝟集魚種数と個体数の魚礁種類間での差が小さくなったこと、および2年目の蝟集個体数が減少した理由については、今のところ不明であり、プランクトン量や水温、溶存酸素などとの関係の分析が必要である。昨年度と同様に、水質(溶存酸素、リン酸)、底質、水温、塩分等の環境、およびプランクトン量について、魚礁間で明瞭な違いは認められなかった。スギ魚礁に魚類が多く蝟集した理由の一つとして、スギでは広葉樹やパイプと比較して樹皮が厚く構造が複雑なことから、付着生物などが多く生息する可能性が推察された。そこで、樹皮付きのスギ、樹皮を取り除いたスギ、広葉樹(ミズメ)のピース(直径10cm,長さ30cm)を、各魚礁の周辺に沈設し、付着した生物量を比較した。まだ、沈設半年後に1回調査しただけであるが、カキ、フジツボ類、ホヤ類などの固着性生物の量は、樹皮のないスギの方が樹皮のあるスギよりも有意に多く、予想外の結果となった。また、水中での木材起源科学物質の測定はきわめて困難であった。
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