研究概要 |
消費者の健康・安全指向の高まりから機能性に関する項目の計測も品質評価として重要となってきている. 本年度は,紫イモとイチゴの機能性色素の画像診断を検討した.対象物の着色度とアントシアニンの関係は510±15nmにおける吸光度値をもって示されているので,この近傍の色素画像(分光画像)から機能性の評価を試みた. 分光画像は可変液晶フィルターを用いて極狭い波長間隔で高感度冷却CCDカメラによって450-650nm範囲を2nm間隔で取得した.分光画像はピクセル毎に輝度値から吸光度値に変換し,平均吸光度二次微分値を求めてスペクトルの作成を行い,化学的抽出法(50%酢酸に24時間侵漬)で得た吸光度二次微分スペクトルと比較し,アントシアニン色素値となる波長の選定を行った.この波長における吸光度の大小をピクセル毎にカラーマッピングしてアントシアニン分布の可視化画像を作成した. ・紫イモ(アヤムラサキ)では,以下のことが明らかになった. (1)525nmにおける分光画像とアントシアニン含有実測値とには強い関係が認められた. (2)525nmを第一波長に重回帰分析で3波長まで選択し検量線を作成した結果,実測値と予測値との重相関係数はr=0.86,SEP=0.064であり,予測精度は比較的良好であった. (3)選択された波長域の分光画像の各ピクセルに検量線を適用し,アントシアニン色素分布の可視化画像が得られた. ・イチゴ(章姫)では,以下のことが明らかになった. (1)分光画像および抽出法から得た吸光度二次微分スペクトルよりアントシアニン色素に由来される508nm波長で両者に強い吸収が観察された. (2)各熟度の平均吸光度を比較すると着色度が進んだ果実,すなわち赤色がアントシアニン成分を多く含む事が分光画像法からも伺えた. (3)各サンプル個体内でのアントシアニン色素分布のムラが確認できた. 本実験の結果,アントシアニンに関する情報は,分光画像から非破壊的に計測可能なことが示唆された.
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