研究課題
熱帯という地域の自然的・社会的諸条件(在地性)を出発点とする新しい畜産学の体系化、すなわち、熱帯畜産の創生を求め、本研究では家畜繁殖学領域からのひとつの試みとして、熱帯畜産の潜在的制約要因である母体の一過性体温上昇(過体温)に起因する種々の繁殖障害を取り上げ、その分子機構を明らかにしようとした。本年度は、研究代表者らが確立した動物実験モデルを用い、暑熱ストレスによる初期胚死滅の誘発および卵胞発育阻害の生理学的機序と分子機構の解明を試みた。その概要は以下のとおりである。1.暑熱ストレス性初期胚死滅に関わる酸化ストレス介在説の証明マウス実験モデルによって得られた上記の仮設を証明するため、抗酸化機能を持つメラトニンを暑熱負荷マウスに投与し、その効果を調べた、その結果、メラトニンは暑熱ストレスによる肝臓での過酸化脂質の増加、卵管での活性酸素の生成を抑制し、さらに初期胚死滅を一定度軽減することを明らかにした。2.暑熱ストレスによる卵胞閉鎖促進の生理的分子機構の解明ラット実験モデルを用い、過排卵反応に対する暑熱ストレスの影響について解析した。その結果、暑熱ストレスは発育卵胞中の顆粒層細胞におけるLH/FSH受容体の発現を強く抑制すること、また、これにより暑熱ストレス下で発育した卵胞ではアポトーシスが亢進することを明らかにした。(業績2)3.暑熱ストレスによる排卵抑制の生理的機序解明シバヤギ実験モデルを用い、上記2と同様の解析を試みた。その結果、シバヤギでも暑熱ストレスは卵胞発育、特にFSHによる選択的卵胞発育の過程を強く抑制すること、また、これにより暑熱ストレス下で選抜された前排卵卵胞は排卵せずに退行することを明らかにした。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
Journal of Pineal Research 39(3)
ページ: 217-223
Reproduction 129(4)
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