日本短角種DM牛では、成熟型のミオスタチンが産生されず、筋分化の負の制御が解除され、骨格筋細胞の過形成と筋肥大が生じ、筋肉量が増加する。このことは通常牛では、ミオスタチンがGH軸を負に調節し、筋肥大を抑制し、筋肉量を制御していることを予想させる。骨格筋細胞の成長には、GH軸が密接に関与することから、日本短角種DM牛での筋肉量の増加はGH軸の機能亢進より生じた可能性が高い。そこで、本研究課題では視床下部-下垂体前葉系で、組織と細胞レベルでミオスタチンのGH分泌抑制作用を詳細に解析し、その作用を解明する。 前年度は1)ウシのミオスタチンポリクローナル抗体による免疫組織化学的解析により、ミオスタチンがTSH細胞に存在すること、2)ウシの視床下部の室房核、弓状核、背内側核、腹内側核、正中隆起、外側野にミオスタチンmRNAが発現することを明らかにした。また、牛の下垂体前葉から前葉細胞のクローニングを行い、株化細胞の樹立に成功した。その細胞がPit-1陽性の下垂体前葉細胞であることを示した。 本年度は計画通り研究が遂行され、下記の成果が得られた。 1)ウシ下垂体前葉細胞において、ミオスタチン受容体(activin receptor type IIb : ActRIIb)が、ACTH細胞で発現することをタンパク質ならびにmRNAレベルで証明した。ActRIIb陽性のACTH細胞がミオスタチンを産生するTSH細胞と隣接して存在することから、ミオスタチンが下垂体前葉でパラクライン的に作用することを示した。 2)ActRIIbを発現するクローン化下垂体前葉細胞を樹立することに成功した。この細胞株はIL-18レセプター統制であることから、ミオスタチンがImmuno-endorine系に関与することが示唆された。 3)ミオスタチンがGH軸のIGF-IとIIの発現を抑制することを証明した。 4)ブタウシ下垂体前葉細胞において、ミオスタチンが、TSH細胞とACTH細胞で発現すること、ActRIIb陽性がACTH細胞であることを明らかにした。
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