研究課題
インターフェロンタウ(IFNτ)は着床前の栄養膜細胞が産生するタンパク質で、反芻家畜の妊娠成立・維持に不可欠な妊娠認識物質として知られている。また、動物実験で種々の免疫不全ウイルスに対しての有効性が確認されており、その利用が期待されているものの、IFNτ確保が困難である。我々はin vitroにおいてIFNτ分泌能を保持したウシ栄養膜細胞の分離に成功しており、本研究ではIFNτの産生細胞であるウシ栄養膜細胞を用いたバイオリアクターを構築するための条件検討を行い、有用物質であるIFNτの大量生産をめざす。本年度は、IFNτ分泌促進因子の検索を行うとともに、新たな栄養膜細胞を分離し、材料の確保に努めた。と場よりウシ卵巣を採材し、定法により体外受精を行った。透明帯脱出胚盤胞を5%ウシ胎子血清(FCS)添加DMEM/Ham's-F12液を用いて培養し、培養皿に接着後、増殖したウシ栄養膜細胞を継代培養した。IFNτ分泌促進因子の検索は、遺伝子発現調節機構に関与するとされるTrichostatinA(ピストン脱アセチル化阻害剤:TSA)150nM、5-AZA-2'-deoxycytidine(メチル化阻害剤:5-aza-dc)5μM、あるいはその両方を同時に添加し、24時間後のIFNτ分泌量を検討した。5-aza-dc添加後24時間では、対照区に比べておよそ1.5倍に分泌量の増加が認められたが、TSA処理区では細胞の変性が若干認められたため、濃度域の再検討が必要である。IFNτの産生細胞であるウシ栄養膜細胞を新たに得るため、黒毛和種あるいはホルスタイン種に人工授精を行い、妊娠24及び28日目に受胎産物を回収した。栄養膜細胞領域を分離し、5%FCS添加DMEM/Ham's-FI2液を用いて培養した。妊娠24日については5頭、28日目については4頭を供試し、それぞれ3および4頭より栄養膜細胞の継代に成功した。良好に増殖している細胞を凍結保存し、材料の確保を図った。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
Theriogenology 63・4
ページ: 1050-1060
Journal of Veterinary Medical Science 66・11
ページ: 1395-1401