研究課題/領域番号 |
16658111
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
太田 利男 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教授 (20176895)
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研究分担者 |
稲波 修 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教授 (10193559)
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キーワード | セロトニン / カプサイシン / TRPV1 / Caイメージング / 痛覚過敏 / 背根神経節細胞 |
研究概要 |
セロトニン(5HT)は炎症や組織傷害により放出される内因性痛覚伝達物質であり、個体レベルの研究ではヒトや動物に著明な痛覚過敏(hyperalgesia)を引き起こすことが知られている。 本年度は、昨年遺伝子クローニングによりその機能を明らかにした痛覚受容チャンネルであるtransient receptor potential V1(TRPV1)機能に対する5HT作用を詳細に調べることにより、単一細胞レベルでのセロトニンによる痛覚過敏発現の機構について検討し、以下の成績を得た。 1)初代培養ラット背根神経節(DRG細昭)にfura-2を負荷して、細胞内Caイメージングを行い、TRPV1活性により生じる細胞内Ca増加反応を解析した。DRG細胞はTRPV1アゴニストのカプサイシンにより濃度依存性にCa増加を引き起こし、この反応はカプサゼギンで抑制された。2)同様なCa増加反応は外液pH低下(酸)、熱によっても生じた。3)5HTの前処置によりカプサイシン、酸、熱によるCa増加反応は有意に増大した。4)パッチクランプ法により測定したカプサイシンによる細胞膜の脱分極と内向き電流は5HTにより増加した。5)5HTによるTRPV1機能増加反応はprotein kinase C(PKC)およびprotein kinase A(PKA)阻害薬により抑制された。6)RT-PCRおよび免疫細胞化学的解析によりDRG細胞には5HT2Aと5HT7受容体が発現してることが示された。7)カプサイシンによるTRPV1増強作用は5HT2A、5HT7アゴニストにより模倣され、各アンタゴニストにより抑制された。以上の成績から5HTによる痛覚過敏のメカニズムには5HT2Aおよび5HT7受容体を介したTRPV1痛覚受容体チャネルリン酸化による機能亢進が関与していることが明らかになった。
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