神経や組織の炎症等による傷害後に発生するモルヒネ抵抗性の難治性慢性疼痛として知られる神経因性疼痛は、その発生メカニズムが未だ十分に解明されていない。炎症時には様々な炎症性内因性物質が放出され、これが痛覚過敏を引き起こすと考えられている。そこで本年度は、炎症メディエーターであるセロトニンによる疼痛過敏機序について調べ、以下の成績を得た。セロトニンは5HT2Aおよび5HT7受容体を活性化させ、Aキナーゼ、Cキナーゼを介して、TRPV1受容体を活性化(感作)することが分かった。また、アジュバンドにより惹起した炎症ラットの後根神経節細胞では5HT2A及び5HT7受容体遺伝子の発現量が増加することを見出した。これらの結果より、炎症性痛覚過敏の発生は、炎症時に血小板や肥満細胞から放出されるセロトニンがTRPV1分子の活性化、あるいはセロトニン受容体サブセットの発現量増大が関与していることを明らかにした。
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