本研究では、まずプロテアーゼ受容体2(PAR-2)の潰瘍性大腸炎への関与を明らかにし、次にPAR-2抗体を作成し新規治療薬として開発するための基盤作りを目的として、実験を進めている。 潰瘍性大腸炎モデルマウスは、雄性SDラットに5%DSSを自由飲水させることで作成した(DSSラット)。対照群には7日間水道水を自由飲水させたラットを用いた(Controlラット)。DSSラットでは、激しい下血、体重減少、結腸の短縮が見られ、炎症の程度を示すMPO(Myeroperoxidase)活性は粘膜層で著しい増加が観察されたが、平滑筋層での変化は認められなかった。 DSSラット結腸平滑筋における収縮弛緩反応とPAR-2の関係を明らかとするため、PAR-2作動薬(trypsinおよびSLIGRL-NH_2)による弛緩反応を観察したところ、DSSラットにおいては有意な弛緩反応の減弱が認められた。しかし、PAR-2弛緩機構に深く関与するCa活性化Kチャネル(SKCa)の影響を明らかにするため、SKCa活性化薬である1-EBIOによる弛緩反応を検討したところ、弛緩反応には変化が認められなかった。また、SKCaのmRNA発現量にも有意な減少は認められなかった。一方、PAR-2のmRNA発現量はDSSラットにおいて有意に低下していた。 これらの結果より、DSSラットにおいてはPAR-2発現量が減少することにより、受容体を介する弛緩反応が減弱し、消化管の運動機能不全を起こしていることが示唆された。
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