研究概要 |
研究代表者のこれまでの研究結果から、高病原性鳥インフルエンザウイルスをマウスに経鼻接種するとウイルスは気道粘膜で増殖後、主として迷走および交感神経の上行性神経線維を経由して中枢神経組織に侵入すると考えられた。そこで、迷走神経を片側性に切断したマウスにインフルエンザウイルスを経鼻接種し、末梢および中枢神経系におけるウイルス抗原とゲノムの出現時期を経時的に検索したところ、迷走神経を切断した側では非切断側に比べ2日間遅れて迷走神経節にウイルスが到達したことから、経鼻接種されたウイルスは呼吸器粘膜から迷走神経を経由して脳幹へ到達することが分かった(Vet Pathol,2004)。つぎに、分画ディッシュで培養したマウス脊髄背根神経節神経細胞の軸索末端にインフルエンザウイルスを感染させ、軸索輸送によって神経細胞体核周囲に到達するか否か、さらに、tubulin重合阻害剤、actin阻害剤、あるいは中間径フィラメント阻害剤処理した培養神経細胞においても軸索輸送されるか否かをin vitroで検討した。その結果、インフルエンザウイルスは軸索輸送によって経神経伝播することが分かった。さらに、経神経伝播することが分かっている狂犬病ウイルス、オーエスキーウィルスなどはtubulinの重合体である微小管を介して軸索輸送されるが、インフルエンザウイルスの軸索輸送は微小管を破壊しても影響を受けなかったことより、インフルエンザウイルスは狂犬病ウイルスやオーエスキーウイルスとは異なる未知の様式によって軸索内輸送されていることを明らかにした(J Gen Virol,2005)。 さらに、狂犬病ウイルスおよびオーエスキーウイルス感染に対する皮下免疫および鞘内免疫の効果を比較したところ、これらの経神経伝播感染症に対しては、鞘内免疫によってのみ完全な防御効果が得られることを証明した。
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