E型肝炎ウイルス(HEV)遺伝子の構造蛋白質領域を発現する組換えバキュロウイルスを蛾由来Sf-9細胞株で増殖させ、高感染価の組換えバキュロウイルスを調整した。続いて、この組換えバキュロウイルスを高発現細胞株Tn5に接種してHEVのウイルス様空胞粒子(VLPs)を発現させた。培養上清中のHEV-VLPsをポリエチレングリコール法にて濃縮し、さらにショ糖密度勾配超遠心法にて精製した。精製HEV-VLPsにジチオスレイトール存在下でEGTAを加えて構成蛋白単位に開裂せしめた。次に、本研究で作製された西ナイルウイルスに対するDNAワクチン候補を加え、塩化カルシウム溶液を加えてDNAワクチンを封入したVLPsを再構築させた。DNAワクチン封入VLPsを超遠心法で濃縮して大腸癌由来細胞株に接種し、24時間後に固定・免疫染色したところ、遺伝子導入試薬を用いたときと同様に、細胞内にDNAワクチンによる目的蛋白質の発現が認められた。一方、DNAワクチンのみの接種では目的蛋白の発現は全く認められなかった。これらの結果から、HEV-VLPsによるDNAワクチンの細胞内導入が実証された。DNAワクチン封入HEV-VLPsの鼻腔接種あるいは経口投与で免疫応答が起こるか否か、興味が持たれるところである。次年度の研究計画として、HEV-VLPsを用いたDNAワクチンの細胞内導入で発現する蛋白質の生化学的性状を解析し、実験動物への経鼻接種および経口投与における免疫応答を検討する予定である。
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