昨年まで放射化分析手法について各元素の検出感度ならびに試料調整法などについての検討を行った。そこで、本年度は汚染土壌に生育した作物(ダイズ)について汚染土壌の濃度ならびに作物中への重金属移行について、放射化分析法を用いて測定を行った。照射は日本原子力研究機構のJRR-3M原子炉を用い、短時間ならびに長時間照射により多元素を同時に絶対測定した。これから環境規制がより厳しくなると予想されているCdについて、汚染土壌中のCd濃度を変化させ、特に可食部におけるCd蓄積ならびに他の元素との関係をおこなった。また、通常、金属の分析手法として用いられているICP-AESでは検出できないNaとKの定量性の確認、検出される重金属の感度についても検討も行った。さらにダイズの34品種を用い、汚染土壌(つくばで採取)からの植物への移行について調べた。その結果、植物体中に含まれる品種別にはスズユタカのCd蓄積が最も高く、サチユタカのCd蓄積傾向は低かった。Cd汚染土壌が植物中の元素濃度に与える影響を検討したところ、Mnのみ負の相関性が認められた。4段階にCd濃度を設定した土壌を用い、生育段階におけるCdの蓄積量を調べたところ、スズユタカは全ての組織でサチユタカの約2倍Cdが蓄積され、種子中のCd濃度はスズユタカはCd0.1ppm土壌で生育させたもののみ0.2ppmを下回ったが(約0.17ppm)、サチユタカはCd0.4ppm土壌で生育させたものでも0.2ppmを下回っていた(約0.18ppm)。MgのCd障害緩和作用は10mMのMgを添加した場合約60〜70%の緩和効果が認められた。pH4.5から6.5に上昇すると地上部へのCd移行量が減少するが^<15>Oを用いた実験により水の地上部への移行が減少する傾向がみられた。これらの研究を通して、放射化分析法による環境汚染元素が多元素同時に高感度で絶対測定できることが示された。
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